オスロ国立美術館とは
2022年6月にオスロのウォーターフロントに誕生した、北欧最大級の美術館です。 これまで市内に点在していた4つの館(近代以前の美術・現代美術・デザイン工芸・建築)を一棟に統合して生まれました。 収蔵品40万点以上、常設展示6,500点以上という規模は、アムステルダム国立美術館やビルバオ・グッゲンハイム美術館を上回ります。
ムンクの《叫び》があることで知られていますが、美術館としての本来の幅はずっと広く、 中世から現代まで、絵画・彫刻・建築・デザイン工芸が一館で揃うのが最大の特徴です。 ムンクの部屋は所要20〜30分。美術館全体なら少なくとも60〜90分を見ておくと余裕を持って鑑賞できます。
ムンク以外の見どころ
ノルウェーの画家・彫刻家に加え、印象派・ポスト印象派の巨匠作品も所蔵しています。 訪問者のクチコミでは「ムンク以外にもよい作品がたくさんあった」という声が目立ちます。
ノルウェーを代表するロマン主義の風景画家で、「ノルウェー風景画の父」とも呼ばれます。 フィヨルド、山岳、滝、農村といったノルウェーの大自然を雄大かつ叙情的に描いた作品が多く、 ツアーで実際に訪れるフィヨルドの景色と重ねて見ると楽しみが増します。 ムンクより半世紀前の時代のノルウェーの姿を絵から読み取れます。
ノルウェーを代表する女性画家で、柔らかな光に満ちた室内画が特徴です。 代表作「青い室内(Blue Interior)」は、窓から差し込む光と室内の静けさを繊細に表現した作品で、 国立美術館のコレクションの中でも特に評価が高い一点です。 2023年にはこの美術館での回顧展の後、パリのオルセー美術館にも巡回しました。 ムンクの「不安と絶叫」とは対極にある、静かで温かい北欧画を体験できます。
ムンクが一時期師事した、ノルウェーの自然主義画家です。 社会的地位の低い人々や、社会の暗部を描いた作品で知られています。 代表作「生存競争(Struggle for Survival)」は1889年の作品で、 貧困と労働者の苦境をリアルに描いています。ムンクに影響を与えた画家として、 並べて鑑賞するとムンクの表現の源流が見えてきます。
ノルウェーの美術館でありながら、フランス印象派やポスト印象派の主要作品も所蔵しています。 モネの光の表現、ルノワールの温かみ、セザンヌの構造的な画面、 ゴーギャンの原色の世界、ピカソのキュビズム的な作品など、 西洋美術史の流れをひとつの館でたどれます。 ノルウェー絵画との対比で見ると、北欧と西欧の美意識の違いが実感できます。
来館者のクチコミで「意外によかった」として名前が挙がるのがエル・グレコの作品です。 ギリシャ出身でスペインで活躍した16世紀の画家で、 細長く引き伸ばされた人体表現と神秘的な色彩が特徴です。 宗教画を中心とした作品群は、北欧の画家たちとはまったく異なる世界観を持っており、 館内での「驚き」として印象に残りやすい存在です。
レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」の模写が所蔵されており、 6世紀にわたる絵画の歴史を辿るコレクションの一部として展示されています。 ルーヴルの本物とは異なり、至近距離でゆっくり見られる点が特徴です。 オスロという意外な場所で名画の「写し」に出会う面白さがあります。
北欧デザイン・工芸コレクション
旧「デザイン・工芸博物館」の所蔵品が統合されたことで、 この美術館には19〜20世紀の北欧デザインの変遷を一望できるコレクションも加わりました。
何が展示されているか
椅子・照明・テキスタイル・ガラス器などが年代順やテーマ別に並んでいます。 木材の仕上げ、座面の張り地、金属加工の技術など、 「機能美」を追求した北欧デザインの進化が見て取れます。
なぜ見る価値があるか
現代の北欧デザイン(IKEAやマリメッコなど)の原点がここにあります。 「なぜ北欧の家具やプロダクトはこんなに使いやすくてシンプルなのか」という問いへの答えが、 この展示を見るとなんとなく見えてきます。 純粋な絵画鑑賞とは違う視点で館内を歩けるため、 長時間でも目が疲れにくく、気分転換にもなります。
フラッシュを使わなければ写真撮影できる作品が多いです。 特にデザイン展示エリアは質感の美しいものが多く、撮影スポットとしても人気があります。
中世・古美術コレクション
「古美術なんて…」と思いがちですが、ここには世界的に希少な作品が含まれています。
ロマネスク様式のタペストリー
1100〜1530年代の作品を紹介するエリアには、 現存するロマネスク様式のタペストリーが展示されています。 ヨーロッパで保存されている約1200枚の中世織物のうちの一点で、 この時代の職人技と美意識を直接感じられる希少品です。
ロシアのイコン画
ロシア革命後にソ連が売却した、ゴスチノープル修道院の聖ニコラス教会にあったイコン(聖画像)も所蔵しています。 政変と歴史の波に翻弄されながらオスロに流れ着いた宗教美術で、 ダビデ王と預言者エゼキエルが描かれた作品が特に貴重とされています。
中世・古美術エリアは比較的空いていることが多く、じっくり見られます。 「信仰に仕える(Serving Faith)」と名付けられた展示スペースが、このコレクションのまとまりです。
建物と建築展示
美術館の建物自体が見どころ
設計はドイツの建築家グループ「クライフス+シュヴェルク」。 外観はノルウェー産のスレート(粘板岩)で覆われた、 重厚で窓のほぼないモノリシックな建物です。 「刑務所みたい」「一枚岩(モノリス)のよう」とも言われますが、 内部の展示スペースとのギャップが印象的です。
環境への配慮として、ノルウェーの現行建築基準に比べて 温室効果ガスの排出を50%以上削減する設計になっています。 大理石・ブロンズ・オーク材が内装の基本素材で、 「何世紀にもわたって美術品を守り続けられる堅牢さ」を追求しています。
スヴェレ・フェーンの展示
ノルウェーを代表する建築家スヴェレ・フェーン(1924–2009)の展示室では、 1963年のヴェネチア・ビエンナーレで発表したパビリオンの一部が再現されています。 建築設計の模型やドローイングとともに、北欧モダン建築の思想を体感できる珍しい展示です。
最上階「ライトホール」と屋上テラス
最上階には天井高7mの企画展示スペース「ライトホール」があり、 現代アートの企画展が開催されています。 屋上テラスからはオスロのウォーターフロントを一望でき、 カフェ・ショップ・北欧最大の美術書専門図書館も同フロアに揃っています。
おすすめの鑑賞の流れ
ツアーでの滞在時間は限られています。優先度の高い順に動くと後悔しにくいです。
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1入館後すぐ:2階・60番の部屋(ムンクの部屋)へ直行 《叫び》《マドンナ》など代表作が集まる特別展示室。開館直後か午前中が比較的空いています。20〜30分。
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22階:ノルウェー絵画コレクションを流し見 ダール・バッカー・クローグなどノルウェーの画家の作品が並ぶエリア。フィヨルドや自然を描いた絵はこれから見る景色との対比になります。15〜20分。
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32階:印象派・ヨーロッパ絵画コレクション モネ・セザンヌ・ゴーギャン・ピカソなどの作品。「なじみの名前」に出会えるエリアです。15〜20分。
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41階:北欧デザイン・工芸コレクション(時間があれば) 椅子・照明・テキスタイルなど北欧デザインの変遷。絵画鑑賞に疲れたときの気分転換にも最適。20〜30分。
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5最上階:ライトホール・屋上テラス(時間があれば) 企画展と屋上テラスからのオスロの眺め。カフェやショップもここに集まっています。
ツアーのガイド付き時間はムンク周辺が中心になることが多いです。 自由見学の時間にどのエリアを追加で見るか、事前に決めておくとスムーズです。
実用情報
混雑を避けるには
ムンクの《叫び》の前は常に人が集まりますが、他のエリアは比較的空いています。 開館直後(10時ごろ)の入館が最も混雑を避けやすいです。 週末や夏季は特に混みやすいため、公式サイトからの日時指定券の事前購入が推奨されています。 ツアーの場合は添乗員・ガイドの指示に従ってください。
ロッカーの番号は必ず控えておきましょう。暗証番号式のため、番号を忘れると取り出せなくなります。 また、キャプション(作品説明)の指示を確認してから撮影してください。撮影禁止の作品には表示があります。
この美術館で覚えておきたいこと
- 2022年リニューアル、旧4館統合の北欧最大級美術館
- ムンクの部屋は2階・60番の部屋、《叫び》は部屋に入ると正面
- ハリエット・バッカーの「青い室内」——ムンクとは対極の静かな北欧光線
- ヨハン・クリスチャン・ダールの風景画——これから見るフィヨルドの予習に
- 印象派の巨匠(モネ・ルノワール・セザンヌ・ゴーギャン・ピカソ)も所蔵
- エル・グレコが「意外な収穫」として話題になることが多い
- 北欧デザイン・工芸コレクションは目の疲れたときの気分転換に最適
- 最上階の屋上テラスからオスロフィヨルドが一望できる
- フラッシュなしで撮影できる作品が多い
- 入館後すぐ荷物はロッカーへ(無料・番号を必ずメモ)